古代の夢とサトシの夢


BE@RBRICK x EXCALIBUR "SATOSHI"

本作はブロックチェーンという「新しい宇宙」を主題にした作品である。ブロックチェーン技術に森羅万象や円相を重ね、「永続性・公共性・真正性」を象徴している。

2008年11月1日、わずか9ページの論文が発表された。正体不明の執筆者、サトシ・ナカモトが発明した暗号資産「ビットコイン」は、特定の管理者を持たないデジタル通貨である。すべての取引履歴は分散型台帳技術の一種、ブロックチェーンに記録される。ブロックチェーンは非中央集権的な分散型のネットワーク運用のため「永続性・公共性・真正性」に長けている。これは高度情報化社会における最新の通信技術のように感じるが、実際には古代の宇宙思想に似ている。
かつて、宇宙とはすべての無機物/有機物に対して平等の「永続性・公共性・真正性」に長けた優しくも厳しいメディウムであった。やがて、有機物はヒトになりオサになりクニになり文明を築いた。中世から近代にかけて、社会とは自然に抗う中央集権的なオフラインのネットワーク運用であった。そして現代、オフラインとオンラインが「デュアル」に交差する社会は、資本主義の最果てに古代の夢を見る。

現代社会は環境、人種、性差、格差など様々な問題を抱えている。未来における持続可能な社会とは、特定の管理者に決定されるメディウムではなく、すべての人々が互いを信頼し自然な関係性を取引できる世界かも知れない。甲(あなた)と乙(わたし)だけの、宇宙が見守るトランザクション。それは権力者が発行しただけの、なぜか信頼性があるとされる通貨が流通する以前の、古代の物々交換にも似た関係性の美学といえる。そのように考えるとブロックチェーンに託された未来はあまりにも大きい。サトシ・ナカモトとは未来の神話において、「新しくも懐かしい宇宙」に潜む夢である。

本作をサトシ・ナカモトに捧ぐ。


真名井良秀 / EXCALIBUR